作品概要
《聖母子》は、画家のドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャによって制作された作品。制作年は1290年から1300年で、ヴァル・ダルビア宗教美術博物館に所蔵されている。

『聖母子』は、中世後期のイタリア人画家ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ作とされるテンペラ画である。ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャはシエナ派技法を確立した画家の一人であり、本作は神聖な存在を現実的に描くという、伝統的なイタリア様式画法の先駆けとなったことから大きな意義を持っている。
絵の中で赤ん坊のキリストは、聖母のベールをその手でそっとのけようとしているが、そのべールの下には、キリストの後の運命を案じて悲しげな表情を浮かべる聖母の顔をうかがうことができる。さらにドゥッチョは、聖母と子の身体的な接触の表現にとくに力を入れてこの作品を描いた。よく見てみると、聖母の左手の人差し指はキリストの腰部分のローブに添えられ、キリストの右足はそっと聖母の手首と袖に触れていることが見てとれる。
美しくひだをよせて描かれたベールと、下部に描かれた欄干は、この絵が三次元的に見えるようにする効果を狙ったものである。立体的に見せることにより、絵の中に描かれている神聖な世界と、その瞬間に絵を見ている者が生きている現実の世界とを、結びつける役目を果たしているのだ。
このように細部まで凝った描き方は、神聖なものを現実的に描くために、13世紀には主流となっていた。近年、本作に対してさらに詳しく調査を行ったところ、赤外反射法を用いた検証によって、聖母のベールは丹念に下書きをされていたことが明らかになった。
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