作品概要
《巨人》は、画家のフランシスコ・デ・ゴヤによって制作された作品。制作年は1808年から1812年で、プラド美術館に所蔵されている。

「巨人」(The Giantとしても知られている、スペイン語でEl Coloso, El Gigante, El Panico, La Tormenta)は、長らく画家のフランシスコ・ゴヤの代表作と考えられていた作品である。
研究の結果、ゴヤの弟子であるアセンシオ・フリアの作品であるという指摘があるが、現在も議論は続いている。
構図
本作は、左手側に向かいながら歩く巨人を中心に構成されている。山々は巨人の両足を覆い隠しており、雲はその体を取り巻いている。巨人は攻撃的な姿勢で、肩の高さまで片手のこぶしを挙げている。
暗い谷間には、群衆と家畜の群れが様々な方向へ逃げまどっており、それらが画の下方3/1を占めている。
来歴
1812年、本作品はゴヤの息子ハビエル・ゴヤの所有物となったが、後にペドロウ・フェルナンデス・デュランが所有して、デュランは遺言によって、そのコレクションをスペイン・マドリードにあるプラド美術館に譲った。《巨人》は1931年以来、プラド美術館に所蔵されるに至っている。
論争
ゴヤの作品はプラド美術館に数多く所蔵されており、《巨人》も長らくその真作と見られていた。しかし下方に描かれる民衆のデザインが粗雑なことなどを理由に、マヌエラ・メナによる調査が進んだ結果、ゴヤの作品ではないという結論が2009年に示された。
本作には、「AJ」というサインが認められており、こうした点からマヌエラ・メナは、《ゴヤ》の作者はゴヤの弟子であるアセンシオ・フリアと考えている。
ところが、ゴヤの専門家であるナイジェル・グレンディニングは、メナの意見を否定している。それは本作にはもともと「AJ」ではなく、17という数字が描かれており、アセンシオ・フリアのサインではないとするためだ。
現在もこの問題の決着は着いていないが、アセンシオ・フリアは他の作品に「Aj」というサインではなく「フリア(Julia)」という名前を書いているため、このサインから《巨人》をフリン作だと結論付けるのは早いようだ。
エッチング
ジャスーサ・ベガは『ゴヤの巨人に関する美術テクニック研究法』の中で、同じテーマの「巨人」として知られている2枚のエッチングとの関連性を確証している。このエッチングのセカンドコピーは、マドリードのスペイン国立図書館に所蔵されている。
通常《巨人》は、ナポレオンによるフランス軍がスペインに侵攻していた時期に描かれたことから、時事的な問題を暗示していると考えられている。しかしエッチングで描かれた巨人は、月夜で姿勢をかがめており、戦争には明らかに関係なく孤独を表現している。
ゴヤのエッチングが孤独を描いているのに対して、《巨人》は戦争の惨禍を描いていることからも、両者の作者が別人であると指摘される根拠となっている。
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