作品概要
《雨、蒸気、速度:グレートウエスタン鉄道》は、画家のウィリアム・ターナーによって制作された作品。制作年は1844年から1844年で、英国国立博物館に所蔵されている。

ウィリアム・ターナーによる、「雨、蒸気、速度:グレートウエスタン鉄道」は、1844年にロイヤル・アカデミーに発表された作品である。しかし、制作自体はより早期になされていたと考えられる。現在は、ロンドンのナショナル・ギャラリーに収蔵されている。
グレートウエスタン鉄道は、英国有数の私鉄会社の一つであり、輸送に新たな価値を提供するために設立された。本作の舞台は、テムズ川にかかるメイデンヘッド鉄道橋であると広く考えられている。画面は向かって東にある、ロンドンの方向を向いている。ターナーは汽車や鉄道といった文明機器を好んだとされており、グレートウエスタン鉄道にも乗車している。
本作品は、鉄道での移動中、大雨に見舞われたターナーが、車窓から身を乗り出して雨に打たれ、描いた作品だと伝えられている。荒々しい空気、雨の霧しぶき、強く吹いている風を表現する、画家の真骨頂が表れている。嵐にけぶる橋の上を、汽車のヘッドライトが照らし出している。画家の晩年の特徴である、あいまいな輪郭線は画面全体におよび、初期からロイヤル・アカデミー教授時代に見られたような緻密な描写は影を潜めている。
しかし、光と影のコントラストは高まっているように感じられるのである。ターナーの大気を描き出す絵画手法、光を波長順に分離して描くスペクトル技法は、後のクロード・モネなどフランス印象派画家に影響を与えるが、本作においてもこうした著名画家にターナーが与えた影響の大きさがうかがい知れると言えよう。
1840年代を過ぎると、画家の創作速度は全盛期に比べるべくも無いほど低下する。しかし、創作意欲は体力の低下とは比例していなかったものと推察される。本作の発表から7年後の1851年、この偉大な天才はこの世を去ったのである。
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