作品概要
《戦争》は、画家のウィリアム・ターナーによって制作された作品。制作年は1842年から1842年で、テート・ギャラリー、オンタリオ州立美術館に所蔵されている。

ウィリアム・ターナーによる、「戦争:流刑者とカサ貝」は、「平和:水葬」と対になる作品である。本作は、イギリスとのワーテルローの戦いに敗れたナポレオンが、孤島に流刑され、晩年を過ごした情景を想像して描かれた内容であり、それゆえに、セント・ヘレナ島を舞台に描かれたと言われている。
しかし、画家が実際に観察できたはずもないことから、歴史の中で実際にこのようなことが有ったかどうかは不明である。「平和:水葬」が黒色と寒色の青色を多用した構成であったのに対し、本作品においては赤色、黄色を用いながら佇むナポレオンがカサ貝に視線を落とす様子が描かれている。
軍服で孤独に佇む姿、その周りには何もない様子はナポレオンの孤独を、周囲を取り囲むことは、彼が起こした戦争で流された幾多の血を表していると考えられている。ターナー自身、この夕日の赤色を「血の海」と語っている。本作の制作念は1842年であり、ナポレオンの遺灰がフランスに戻された翌年のことである。
ターナーは晩年期においてはスペクトル技法や遠景・人物の輪郭を廃した描写技法を用いており、輪郭は年々あいまいになっていった。この作品においても、ナポレオンを除く部分、前景を含めた画面全体が、輪郭のはっきりしないぼやけた大気の中に存在している。
本作は現在、イギリス・テートギャラリーに収蔵されているが、「平和:水葬」とともにカナダのオンタリオ州立美術館に貸し出されている。
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