作品概要
《奴隷船》は、画家のウィリアム・ターナーによって制作された作品。制作年は1840年から1840年で、ファインアーツ博物館に所蔵されている。

ウィリアム・ターナーによる「奴隷船」は元々の題名を「台風が襲う船を投げ出された奴隷たちが死体または死にゆくものを乗り越える様子」とされていた。本作は代表的なロマン主義の海事画であり、現在はアメリカ・ボストンのファインアート美術館に収蔵されている。
本作において、ターナーは船を画面の奥側に配置し、乗せていた奴隷たちを海に落として置き去りにしようとする様子を描いている。ターナーが本作を描くに至ったのは、1781年にトーマス・クラークソンによって著された、「奴隷取引の歴史と実態」という著作を読んでのことである。
著者は奴隷船の船長であったが、船が浸水した際に、他の乗客を助けるために133名の奴隷を海に落とし、船の重量を軽くしようとした経験を赤裸々につづっていた。当時は、そうすることが商売上当たり前のことと考えられていたのである。大英帝国では、1833年よりすでに奴隷制が廃止されていたため、ターナーおよび他の人々も奴隷制度は世界中で廃止されているものと信じ込んでいた。
そのため、ターナーはこの画を奴隷制度に反対する会合に提出したのである。これに感動したのが、ヴィクトリア女王の夫のザクセン・コーブルク公であり、彼はこの会議において、イギリスの奴隷制度反対の動きを強めることを宣言し、この画の横にターナーによる題名のない詩を飾ったとされている。
この画を最初に見たときに引き付けられるのは、台風の到来を予感させる荒れ狂った海の向こうに見える真っ赤な太陽であろう。そして次に、他のターナー作品と同じく、様々な色彩が織りなす自然感に圧倒されるであろう。描かれている主題は、線の区切りというよりはむしろ色彩の変化で見分けられるほどである。絵筆の刷毛のあとで描かれた、嵐の風、波しぶきの表現に見入ってしまうことだろう。
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