作品概要
《ヴェスヴィオ火山の噴火》は、画家のウィリアム・ターナーによって制作された作品。制作年は1817年から1820年で、エール大学英国美術センターに所蔵されている。

ヴェスヴィオ火山は、イタリア、ナポリにある火山で、町全体が火砕流に飲み込まれ、人々が化石化した町として有名なポンペイの悲劇を引き起こした山である。本作品は、イギリス人画家であるウィリアム・ターナーが19世紀前後の1794年、1807年、1819年、1822年の噴火を元に描かれた作品である。
本作品の制作は、1817年から1820年にかけてであると言われており、ターナーは1819年に初めての海外旅行としてイタリアに訪問していることから、本作品はイタリアで実際に見た当火山の様子も元に描かれたと推察される。ターナーは初期の地理・地質学者であるジョン・マッククローチやチャールズ・ストークと親交があり、彼らからヒントを得たのか、スケッチには詳細な火山活動の記録が残されている。
ターナーは、1815年、ターナーはフランスの火山の噴火を描いた「スーフリエール火山の噴火」を描いているが、その2年後に印刷出版社のW.B. クックから水彩画による火山噴火の様子を描くようにとの勧めがあり、本作品を描くに至った。
本作は、水彩絵の具、ガム、掻き出しの技法を組み合わせて描かれている。掻き出しとは、キャンバスの上に色を塗り重ねた後、筆や先端の細いヘラまたは針のような道具によって上塗りした色を削り取り、下に塗り重ねた色を表に出す技法である。技法を想像するには、保育園や幼稚園のお絵かきの時間に、虹色に塗ったクレヨンに黒のクレヨンを重ね塗りし、爪やコインで線や文を削りだしたことを思い出すと良いだろう。
こうした技法が、特に噴出するマグマと周囲の黒い噴煙に用いられている。ターナーは同年、ナポリ湾から見た噴火の様子も描いている。
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