作品概要
《カルタゴを建設するディドー》は、画家のウィリアム・ターナーによって制作された作品。制作年は1815年から1815年で、英国国立美術館に所蔵されている。

国の建国」は、画家にとって最も意味深い作品の1つである。本作は、クロード・ロラン(クロード・ジュレ)による、光と影を用いた古典的な風景画の技法に大いに影響を受けて描かれた作品であり、1815年、夏のロイヤル・アカデミー展示会に主点された。
クロード・ロランは18世紀において絵画の主題として選択されることの稀であり、人気も低かった風景画政策に取り組んだ画家である。本作においては、一点透視図法、水面への太陽光の反射の表現に、クロード・ロランの影響がみられている。
その後、ターナーは本作を自身による「傑作」と位置づけ、国の美術館に遺贈するまで度々加筆している。なお、ターナーはロランへの尊敬の念からか、本作を彼の作品2点の間に配置することを条件に、国家に寄贈されたと言われている。本作は、1856年からロンドンのナショナル・ギャラリーに収蔵されている。
作品の主題は、古代都市カルタゴを建国した女王、ディドーの伝説を描いたものである。ディドーは、ローマの詩人、ウェルギリウスによる「アネーイス」の中に記されている。水面を画面の左右一杯に描き、左に古代的建造物、右に青々木々を描くことにより、中央に向かって流れていく様が遠近法により見事に表現されている。
これにより、画を見る者に船の進行方向、出航の様子を容易に思い浮かべることができる。そして、その先にはぼんやりとした遠景が浮かび、本作の世界観に壮大な奥行きを与えている。
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