作品概要
《吹雪:アルプス越えを行うハンニバル将軍とその軍勢》は、画家のウィリアム・ターナーによって制作された作品。制作年は1812年から1812年で、テート・ギャラリーに所蔵されている。

ウィリアム・ターナーによる「吹雪」は、1812年に制作された油絵である。本作は、ターナーの死後5年後にあたる1856年、イギリス国立美術館に遺贈されたものだが、現在はテート・ギャラリーに保管されている。
本作は、紀元前218年、アルプスの南西部にあるマリティム・アルプスを越えようとするハンニバル勢が、厳しい自然と現地の部族の存在に対峙する様子を描いている。画面に目を移すと、暗く吹き荒れる吹雪が空を覆い、背後の谷への転落の危険性を抱えながら進む一行の様子である。
雲の間から黄色の太陽がかろうじて顔をのぞかせている。ハンニバル将軍がどの人物であるかは分からないが、おそらくは、遠くに見える象に騎乗した人物がそうであろう。絵の前景においては、サラシアン部族がハンニバル将軍の軍人と戦いを繰り広げている。
ターナーは本作のように歴史上の一場面を描いた作品を特にキャリアの初期において多く描いているのだが、すでにロイヤル・アカデミーの教授就任後5年を経過していた時期に描かれた本作には、後に彼が確立し、クロード・モネらにも影響を与えた技法が見られている。
すなわち、逆巻く風、雨、雲、ダイナミックな明暗コントラストと言った技法であるが、本作はそうした技法が初めて使用されたものである。もし興味があるようであれば、1842年の作品、「吹雪:潮流によって岬から流されるボート」と比較してみると良い。
ターナーは本作品において、ハンニバル将軍の姿およびローマとカルタゴ(チュニジア)の戦いに、自身が生きた時代におけるイギリスとフランス帝国、ナポレオン皇帝との闘いを投影して描いているのだ。
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