作品概要
《海上の漁師たち》は、画家のウィリアム・ターナーによって制作された作品。制作年は1796年から1796年で、テート・ギャラリーに所蔵されている。

「海上の漁師たち」は、ターナーがロイヤル・アカデミーの会員になって初めて発表した作品である。この時ターナーは21歳、14歳でロイヤル・アカデミーに入学し、母の病気が元で断続もありながら叔父の元で育てられた絵画の天才が多くの批評家に知られることになった作品の1つと言える。
本作は、発表の前年、1795年にワイト島に旅行した際に描いたスケッチを元に描いた油絵で、このほかにも10点の油絵と水彩画を同時に発表している。本作品で描かれた風景は、ホレス・ヴェルネやフィリップ・ド・ルーテルブール、ジョセフ・ライトらによって描かれた、月明かりに照らされた海上を題材としたよくある主題を踏襲したといえるものであった。
これら3人の画家は、18世紀美術において、夜の風景を描いた作品、特に本作のように月明かりによって主題が浮かび上がるような風景を描くことを流行させた存在と言っても過言ではない存在である。圧倒的な自然の力を描き出すことこそ、こうした作品のメインテーマであり、本作においても船を取り囲む波のうねり、大海の中にある一艘の船の孤独感が描き出されている。
また、月明かりに照らし出された船上でゆれるランタンの小さな明かり、その揺らぎや水面への朧げな反射も、自然の大いなる力と、時にそれに抗う術の無い人との対比を強調するのである。画面左に見えるシルエットは、「ワイト島の針岩」とあだ名される危険な岩場であり、この小さな漁船の乗組員の運命は、自然からの采配にゆだねられている、その緊張と不安が伝わってくる。
本作品は、波の表現、月明かりに浮かぶ船と周囲の闇における不安の対比が高く評価された。
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