作品概要
《摩天楼の謎》は、画家のジョルジュ・デ・キリコによって制作された作品。制作年は1960年から1960年で、ローマ(個人蔵)に所蔵されている。

《摩天楼の謎》は、イタリア人の画家ジョルジュ・デ・キリコによる形而上絵画である。この作品は1937年作の《神秘的な水浴場》に基づいている。
アメリカ滞在
デ・キリコが初めて渡米したのは1935年で、その時は1年半ほど滞在し、せっせと絵を描き腕を磨いては、契約画廊と2度の個展をこなして「雨あられと降るドル紙幣」を手に入れたという話がある。
アメリカ滞在中は仕事が唯一の楽しみで、見るもの聞くもの全てが気を滅入らせ、侮辱心を掻き立てたようである。しかし、後になるとデ・キリコ は、「私はニューヨークにも独自の美、形而上的な要素があることを知るようになった」と自伝で語っている。
初めのうちは「死んだ自分が未知の天体で不意に目を覚まして」見たような、理解しがたい光景だった摩天楼は、その不可解さのゆえに、かえってキリコの絵画の中で神秘的な背景となって甦ったのである。
構成
これはニューヨークの光景である事は間違いないだろうが、この作品は夜の摩天楼と奇妙な水浴がひとつに組み合わせられた、極めて不思議なイメージの作品である。この水浴の図は、遠近法をまったく無視した点にひとつの特徴がみられるが、この《摩天楼の謎》も人物の大小関係が極めてチグハグである。
それに、水浴の光景だけに限ってみると右側は昼、左側は夜を思わせ、どこかマグリット的なイメージを彷彿とさせるところもある。あるいは、手前の水浴場は昼、彼方の摩天楼は夜ともいえよう。異なった時間が同一画面に投げ込まれているような構成である。
全体の描き方に対して、水面の描き方の極端な様式化のコントラストが強く印象づけられる作品である。
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