作品概要
《偉大な形而上学者》は、画家のジョルジュ・デ・キリコによって制作された作品。制作年はN/A年から1917年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

《偉大な形而上学者》は、イタリア人画家ジョルジュ・デ・キリコによる形而上絵画である。
物質文明の図像
キリコの絵にはじめてマネキンが出現したのは、1914年、アポリネールないし、詩人の思想を描いた絵の中でだった。
アーケードのある広場に、背をむけた石膏像が、定規や立体物や洋ダンスなどが迷路のように入りくんだ物質間の新しい秩序にもとづいて、姿を現す。ここには、自然を征服し、自然を奪い取ることによって、文明の名のもとに発展をつみ重ねてきた現代人の心象が鮮やかに浮きぼりにされている。
キリコの描く風景は、ルネサンス風ないしは、ネオ・クラシック風の建物や、全史時代の戦闘、フィクションのメルヘンのような現実世界の再構成などであり、現実には実在せず、あるいは消え去ったものばかりである。キリコがことさらそのような態度に徹するのは、何も物質文明に背を向けて、仮象の世界においてのみ自分の世界を求めようとしたためではない。逆に、時空をこえたものたちのあらたな配置によって、行き場を失った文明に新たな旅立ちの可能性をキリコが信じ続けたためである。
シンボル
古いアーケードのある広場で、超文明的なコンポジションの物質が形づくる乗り物のうえの石膏像は、時の金が鳴り響くのを今やおそしと待ちかまえている。
この当時の作品を丁寧にみていくと、詩人、標的、仮死、解剖標本、縫合、裁縫用マネキン、魚、大洋、古代彫像、旅などのシンボルの連鎖系が浮かんでくる。
この連鎖系の先にくるのはおそらく”再生”であろう。この作品は早くも”新人”として再生し始めている様に思える。
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