作品概要
《疲れてしまった吟遊詩人オルフェウス》は、画家のジョルジュ・デ・キリコによって制作された作品。制作年は1970年から1970年で、キリコ・エ・イザ・デ・キリコ財団に所蔵されている。

《疲れてしまった吟遊詩人オルフェウス》は、イタリア人の画家ジョルジュ・デ・キリコによる形而上絵画である。
オルフェウス
ギリシャ神話によると、オルフェウスは音楽家で詩人であり、彼の竪琴を聞くと、どんなに獰猛な野獣もおとなしくなり、石でさえ動いたという。
デ・キリコは二回、オペラの舞台美術を手がけている。一つめは1949年のフィレンツェ・マッジョ(5月)音楽祭で演じられた作曲家モンテヴェルディのオペラ「オルフェウス」、もう一つは1973年の作曲家グルックのオペラ「オルフェウスとエウリディーチェ」である。
新形而上絵画の図像
デ・キリコは、1920年代から自らの《形而上絵画》のレプリカを繰り返していたが、1960年代後半から1970年代にかけて、いわゆる「新形而上絵画」の時期に入り、それまで描いてきた作品のスタイルやモチーフを、新たに組み合わせた作品を発表し始める。この作品はその「新形而上絵画」の時代の作品である。
キリコは単に自分の初期作品のレプリカを製作したのではなく、そこには彼独特の皮肉が含まれている。ここでのコンポジションは大きな、人気のない広場、15世紀の柱廊のある建物など、彼の作品に共通するモチーフが見られる。後方には大きな煙突が見え、1910年代の工業地帯風景を思わせる。壁の向こうには地平線が見え、地中海沿いの街に船があるのが見える。
形而上のイコノグラフィー
緑の雲が立ち込める空には、ウルビーノの城が、あたかも遠い記憶の中から呼び起こされているように描かれている。絵画の主役はマネキンの姿をした吟遊詩人で、キリコが1910年から1920年代にかけて用いていたモチーフである。
マネキンの肩越しに見える背景は、1915年から1918年のフェラーラ滞在時に描かれた《形而上室内》のモチーフを思わせるが、過去の作品のモチーフの寄せ集めではなく、キリコはここに新しいイコノグラフィーを与えている。
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