作品概要
《赤い塔》は、画家のジョルジュ・デ・キリコによって制作された作品。制作年は1913年から1913年で、グッゲンハイム美術館に所蔵されている。

《赤い塔》は1913年に制作された、イタリア人画家ジョルジョ・デ・キリコによる形而上絵画である。
デ・キリコの形而上派の「謎」シリーズは主に1910年頃から1919年の間に描かれ、極めて重要なインスピレーションをシュルレアリストたちに与えた。
塔
この作品の特徴は、題名にもなっている巨大な円形の赤い塔の存在感であろう。太くて短い塔には不揃いな、ある意味適当に配置された窓が数個と小さなドアがひとつしかなく閉塞感が漂う。また塔の屋上のデコレーションも不均等に描かれている。
古典的な赤い塔の周りには現在を象徴しているような農家の家屋がみえるが人間は存在しない。赤い塔の位置は中心から微妙に左にずれているが、塔の右側に彫像を配置することでバランスを取っているようにもみえる。彼の不合理な遠近法は、デ・キリコの空想上の世界を表現し、観ているものを不安にさせる。強烈な黄色い光はどこから指しているのかわからない。奥の鮮やかな光と、手前の影のコントラストはみるものを惹きつける。
色彩、静けさ
ブロンズの騎士像の影は妙に長い。背景は茶色い丘が描かれているが、左端だけ隙間から緑色の丘がみえる。青い空と、赤茶色の塔、黄色い地面、赤い農家の家の屋根、緑の丘、暗い影の茶色、黒と殺風景なようで色彩豊かである。
右下には地面に謎めいた箱が置かれている。イタリアの広場に古典的なアーケードが不気味な静けさで広がっているが、そこにも人間の姿は見られない。この人間の不在性は郷愁や憂愁性を表しているともいわれている。不安な出来事が起きる前触れのようでもある。
デ・キリコは1911年パリに移住し、サロン・ドートンヌに《神託の謎》《ある秋の午後の謎》《肖像画》を出展した。その際、詩人のギョーム・アポリネールやパブロ・ピカソに評価され、はじめて売れた作品がこの《赤い塔》である。塔をモチーフにした作品は1913年頃に多く見られる。
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