作品概要
《王の凶悪な天才》は、画家のジョルジュ・デ・キリコによって制作された作品。制作年は1914年から1915年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

《王の凶悪な天才》はジョルジョ・デ・キリコが制作した形而上絵画である。制作は、1914‐1915年。
デ・キリコはギリシャで生まれ育ち、両親はイタリア人である。アテネとその後ミュンヘンのアカデミー美術院で絵画を学び、そこでドイツ人哲学者のニーチェやショーペンハウアーの本を読みふけった。
1909年にイタリアへ戻り、後に形而上(メタ・フィジカ)派と呼ばれるスタイルを確立する。形而上絵画には、夢の世界と古典的な建築のコンビネーション、また幾何学模様を多用する特徴がある。この形而上(メタ・フィジカ)派によるムーブメントは、後のシュルレアリスムに絶大な影響を与えた。
作品の特徴
まず、古典建築であるアーケードとレンガの壁が背後に見え、手前には角度が急な板が斜めに置かれている。その上には巨大な赤い棒、完全な丸い緑色のボール、鍵、白い矢印、不可解で幾何学的な形をしているオブジェクトがバラバラと陳列されている。
そこには角度や重力の法則は存在しない。ボールは斜めの板に置かれているが転がらずにとどまっている。赤い棒は斜めの土台に対し不自然な角度に置かれているが、やはり微動だにしない。
また不可思議なオブジェクトも存在する。一説によれば古代エトルスカンアートに興味を持っていたデ・キリコが、羊の肝臓をモチーフに描いたとも言われている。
そして、強烈な光と影のコントラストも特徴的である。そのコントラストは、絵の中の湾曲した空間をはっきりと照らし出している。絵が持つ不安定さのバランスを取っているのかも知れない。
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