作品概要
《花》は、画家のウジェーヌ・ドラクロワによって制作された作品。制作年は1848?年から1850?年。

《花》はウジェーヌ・ドラクロワが描いた水彩画である。彼は、1848年の秋から1850年の春にかけて、花をテーマにした作品を5点制作したのだが、本作は、その中の一つと推察されている。
一つ一つの花は、植物学者の描く図鑑のように丁寧に分析されている。後にオディロン・ルドンが水彩画やパステル画を描く際に、真似た手法である。
セザンヌが愛した絵
この作品は、ポール・セザンヌが所蔵していたことで有名だ。彼は、この作品を大変尊敬し、1900年頃には油絵で模写もしている。偉大な静物画家と称されたセザンヌが、この作品に興味を持ったという事実は、大変意義深いものである。
セザンヌは、ドラクロワがこの傑作に込めた革新的な思いを、しっかり認識していたのだろう。彼は、この作品にみられる大胆な型にはまらない構成と、群を抜いた豊かな色彩を絶賛した。彼は「この画家のパレットは、フランスで最も美しいパレットだ」と称賛している。
作品の特徴
ゼラニウムの赤の濃密さが印象深い絵だ。花々は実に丁寧に緻密に描かれている。
しかし、ドラクロワは、緻密な自然主義的な観察だけでは満足しなかった。彼は、咲き誇る花々すべてを、画面上に魅力的に配置し、それぞれを秩序を持って描いた。まさに理想の庭園を思わせる絵である。
ドラクロワの手紙
彼はテーマも設けずに自然にその発想の源を求め、本作を制作した。これは彼にとって珍しいことである。この作品の制作を記した彼の手紙がある。彼は1849年2月6日に、コンスタン・デュティユーにこんな手紙を送っている。
「私が今仕上げている花の絵のことを気にかけてくれるなんて、君は本当に優しい。私は、今、デザインを決めずに制作を進めているのだ。そして可能な限り、詳細なディテールよりも全体の仕上がりを優先させた。加えて私は、花を描く画家は、皆似たような花瓶で似たような柱や素晴らしいカーテンを背景やコントラストに使う、と決めつけて非難する古い考えを、少し払拭したかったのだ。私は庭園に見受けられるような自然を描いた作品に、いくつか挑戦してみた。ただそれらを同じ枠の中に描くだけ。可能な限り変化に富んだ色々な花を描いた。」
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