作品概要
《空色》は、画家のワシリー・カンディンスキーによって制作された作品。制作年は1940年から1940年で、パリ ポンピドゥーセンターに所蔵されている。

《空色》はカンディンスキーが晩年描いた作品であり、彼自身は以下のように評している。
「雲一つない青空に浮遊するこの鳥達は、空色に釣り上げられた不条理で幻想的な、なおかつ確かに在る物達なのだ。個々の独立した形状が体積のない世界、天空で結晶の様に形成して現れたのだ。」
作品の特徴
本作は全体の空色がキャンバスの外側に向かって白みを増しており、その色あいは、キャンバス内の世界の静寂を表現していると推測される。
一つ一つのモチーフは、黒で輪郭が描かれ、色彩の中で黒が均衡を取るように配置されている。
原色で描かれた図形的形状と中間色の有機的形状を混ぜて構成されたそれぞれの形状は、キャンバス上で精密に配置されている。
本作品の形状の幾つかは、当時フランスの美術界で持て囃されていたバロック様式の影響のようにも思われる。しかし、晩年の彼は、フランスで抽象絵画が全く好まれずバロックやゴシック調美術が持て囃されていることに度々不満を述べている。したがって、本人は、本作と当時のフランスの美術界の関係性を否定している。
モルナウへの郷愁
1943年12月にカンディンスキーが亡くなった後、本作は彼が1908年に描いた絵画「モルナウの風景と塔」で描いた塔を破片的に表現したのではないかとの推測がなされた。
晩年のカンディンスキーは、フランスで孤立した生活を送った。彼は度々、若かりし頃のモルナウでの生活を懐古している。モルナウをモチーフにした作品は、画家の郷愁の念によるものだろう。
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