作品概要
《コンポジションⅨ》は、画家のワシリー・カンディンスキーによって制作された作品。制作年は1936年から1936年で、パリ ポンピドゥーセンター近代美術館に所蔵されている。

《コンポジションⅨ》はカンディンスキーによる、1936年の作品。前作のコンポジションから10年後に完成した。
この作品を手掛けた時期、ナチスが権威を振るうドイツで抽象画への圧力が強まり、カンディンスキーは追われるようにして1933年にフランスへ移った。
パリでは、新古典主義やロココ様式の流行が続き、抽象芸術は完全に息を潜めていた。
その様な風潮の中でも、カンディンスキーは抽象芸術に関する随筆を数多く出版し、作品においても自身の信じる絵画表現を追求し続けた。本作品はパリに移り、他の芸術家達から孤立していたカンディンスキーの晩年の作品である。
シュルリアリズムの先駆け
前作までの各コンポジション作品は、その完成に至るまで多くのの予備作品、デッサンが存在するが、この《コンポジションⅨ》は一枚の予備画のみで作品完成に至っている。
カンディンスキー自身は、作品の制作にシュルレアリズム(超現実主義)の影響を否定しているが、本作品と次作の《コンポジションⅩ》は、しばしばシュルリアリズム作品として取り上げられる。
本作で見られる有機的造形は1940年代、カンディンスキーが亡くなった後のシュルリアリズム作品で多く見られる様になった表現である。カンディンスキーは無意識にその形態を先駆けていたのだ。
作品の特徴
本作では黄、青、赤が左側に、その3色の等和色が右側に、斜め方向に厳密にキャンバスを区切っている。大きさも形も異なる様々な造形は区切られた平面に不規則に漂う様に配置されている。
本作はフランス国内の美術館に買い取られた最初の大きな抽象画作品であるが、カディンスキーが100,000フランを要求するも実際は5000フランで買い取られたいきさつを持つ。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。