作品概要
《ムルナウ郊外の汽車》は、画家のワシリー・カンディンスキーによって制作された作品。制作年は1909年から1909年で、ミュンヘン ベンバッハッハウスに所蔵されている。

1904年から1908年、カンディンスキーはドイツ、ミュンヘンで自身が発起した芸術家グループ「ファランクス」を畳んだ。そして長年の愛人ガブリエラ・ミュンター共にヨーロッパ各地で絵画制作と展示会を行った。
その旅の後、二人は南ドイツの小さな街であるムルナウで5年程過ごしている。カンディンスキーはムルラウの風景に触発されて、自身の表現を木版画から油絵による風景画へ移行していったと言われる。
作品の特徴
本作はカンディンスキーがミュンターと暮らした家の庭から見た風景であるといわれている。
油絵でありながら、カンディンスキー初期の木版画作品を思わせる表現が多く見てとれる作品である。抽象画のスタイルであるが、作品内の汽車や教会等は現実の写実により近いタッチで描かれている。
黒い汽車は恐怖心の象徴
絵には、厚く塗られた力強い線と、はっきりした色調の風景の中で大きく黒い汽車が影絵のように際立って描かれている。汽車は最前面からはみ出さんばかりに配置され、線路が闇を集めてセイントニコラス教会の建つキャンバスの右上方をかき消すように描かれている。
当時のカンディンスキーは、世界大戦が起ころうとしているヨーロッパの風潮の中、自身の追及する芸術の在り方や倫理を侵されるという恐怖心を持っていたと言われている。
本作の汽車やそれに続く黒い線路は、その恐怖心の表れと推測される。
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