作品概要
《コンポジションⅩ》は、画家のワシリー・カンディンスキーによって制作された作品。制作年は1939年から1939年で、デュッセルドルフ州立美術館に所蔵されている。

《コンポジションⅩ》は、ワシリー・カンディンスキーの「最後のコンポジション」と言われる、カンディンスキーが亡くなる5年前の1939年に描かれた絵画である。背景色に使われた黒が、自身の死期を感じ取った表れであると言われている。
復活するスタイル
図形による、自己の内面表現を追求したカディンスキーの作品で、以前まで見られなくなったとされる有機物を思わせる造形が、後期の作品には再び描かれている。カンディンスキーは当時、人や植物を思い起こさせる有機物を描く、超現実主義の「バイオフォミック」の流れに影響を受けたとされている。
本作品は「現代抽象画」のスタイルで描かれており、カンディンスキーの死後、1940~1950年代に広く見られる様になったスタイルを先駆けたものであると言われている。後期のカンディンスキーはその先駆け的表現から、当時のどの芸術家グループからも孤立した存在になっていたと言われている。
謎めく図像
《コンポジション Ⅹ》は、印象的な黒の背景に、リボン、カード、本、紙吹雪など、パーティーを連想させる多くの形状が、華やいだ中間色を用いて描かれている。作品内ではそれらの形状が、中央に描かれた2本の斧の形から上に向かう様に配置されている。そして、多彩な中間色の均衡を保つかのように黄と赤が原色で組み込まれている。
左側には、茶から赤の広がりを持つ球根状の形の中に、「未来的都市景観」とも「不可解な造形文字」とも言われる、線や形が描かれている。
華やいだ色使いと謎めいたオブジェ、そして宇宙的な黒の背景。カンディンスキーが、抽象画による内面の表現を最後まで追求し続けた事を物語る作品である。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。