作品概要
《磔刑のキリストを描く聖ルカ》は、画家のフランシスコ・デ・スルバランによって制作された作品。制作年は1630年から1640年で、プラド美術館に所蔵されている。

『磔刑のキリストを描く聖ルカ』はスルバランの描いた磔刑のキリスト像の代表的な作品のひとつと言われる。この作品はユダヤの王と宣言し民を惑わせたとして、ユダヤの大司祭や民衆によって磔刑に処される受難者イエスの姿と、その姿を描く老人が主人公である。
この老人は通常、聖マリアを描いたなどと伝承され、画家であった考えられる聖ルカと解釈されている。しかし、スルバランの再評価で有名な研究者マリア・ルイサ・カトゥルラによってスルバラン自身の自画像ではないかと指摘された。この説については、現実的で生々しい場面の表現には生身の人間で画家であるスルバラン自身の自画像を用いることが必要であるというスルバランの考えによるものと思われている。
しかし、当時画家は三十代?四十代であったことから、この説に疑問を唱える研究者もあるが、リアリティを追求した本作においてのこだわりを細部に発見するたび、妥協なき挑戦の精神がうかがえる。
十字架の上のイエスには、理想を投影したような要素も見られるものの、胸骨や胸、首、胴体にかけての生々しい描写によって、場面をより見ているものに迫りくるような表現を成し遂げているのが驚きである。十字架に架けられたイエスの足元もまた描写が非常に精密でリアリスティックである。また、絵の左側から当てられるライトによってはっきりとされる明暗が、スペインのカルバッジョと評されるスルバランの巧みな技法を存分に発揮している。
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