作品概要
《女性と子供の肖像画(ナショナル・ギャラリー)》は、画家のアンソニー・ヴァン・ダイクによって制作された作品。制作年は1620年から1621年で、ナショナルギャラリーに所蔵されている。

『女性と子供の肖像画』はフランドル派の肖像画家アンソニー・ヴァン・ダイクが1620年か21年に制作した作品である。現在、ロンドンのナショナルギャラリーに所蔵されている。
本作品はヴァン・ダイクの描く作品の中で、最も親しげで、少なくともあまり格式ばっていない肖像画のひとつである。イタリアに発つ1621年前までは、アントワープの貴族やその家族を多く描いていた。この作品の中の名も知らない女性と子供はもしかすると、女性の夫の肖像画のセットの一枚として制作されたのかもしれない。
子供の注意は左側に向けられており、父親がいると想像することもできる。この生き生きとした子供の無邪気な姿は、母親の凛として微動だにしない静寂な姿と見事な対比を生んでいる。この母親が着ている衣装は装飾品含めて控え目ながらも高貴で上質であることが伺え、見事に描かれている。
ヴァン・ダイクが若かりし時に描いた初期の頃の肖像画からは、親密さや快活さといったエッセンスを感じることができる。これらは17世紀を代表する巨匠であり師匠であったルーベンスから多大なる影響を受けているとみられる。一方、イタリア修業を経たヴァン・ダイクが再度英国に戻ってから制作した作品は、色彩豊かで煌びやかな作品が多い。
また本作品では背景は暗く、モデルの体の角度は30度の位置に、そして目線は画家を見るというルーベンスの基本的な肖像画様式がみられる。本作品を制作した後イタリア修行に行き、イタリアの巨匠ティツィアーノのヴェネツィア派の華やかな絵画に魅了されたヴァン・ダイクは、その後に描く肖像画にも変化が見られる。本作品は新たな境地を迎える前の、嵐の前の静けさのような作品でもある。また、同タイトルの作品は多数存在している。
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