作品概要
《サムソンとデリア》は、画家のアンソニー・ヴァン・ダイクによって制作された作品。制作年は1618年から1620年で、ダリッジ・ピクチャー・ギャラリーに所蔵されている。

《サムソンとデリア》は、アンソニー・ヴァン・ダイクが1618年から20年の間に制作した宗教絵画である。サムソンとデリラは、旧約聖書の士師記に登場する物語である。ヴァン・ダイクは17世紀を代表するバロック期のフランドル派の巨匠、ルーベンスの元で、20代前半には優秀なアシスタントとしてアントワープの工房で制作をしていた。
ルーベンス作品と酷似
この「サムソンとデリア」はルーベンスも描いた題材であり、ルーベンスの作品と比較すると酷似していることがよくわかる。この作品では、主人公であるはずのサムソンではなく、サムソンが愛していたデリアに視点を集中させるように描かれている。
巧みなライトがデリアに照明があてられ、その姿を際立たせている。デリア以外の人物像や背景はやや暗くなっている。ここでは、優美なシルクの衣装がはだけているデリアと、デリアにすがるように倒れているサムソン、そしてその状況を見つめるまわりの人々たちの情景を描いている。
情景
デリアの柔らかくミルク色をした美しい肌は、毛皮の腰巻きだけを身につけたサムソンの浅黒い肌と対照的に描かれている。デリアの背後にいる二人の女性は、興味と不安な表情を浮かべ、サムソンが起き上がるかどうか心配しているかのようだ。
円柱の影に隠れて遠くから守衛たちも心配げに見つめている。デリアはリラックスした状態で、指を静かに上げているのは、あわてている女性たちや守衛を静止するかのようにも取れる。普通のはさみを使って羊毛刈りをしている男性が駆け寄っているのも、この場面をより現実的にドラマチックにさせている。
ルーベンスから影響を受けたダイク初期作
この作品はヴァン・ダイクの華々しいキャリアのなかでも特に初期の頃に描かれている。いずれにせよ、ルーベンスから大きな影響を受けた作品といえよう。また同タイトルの作品は多数存在している。
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