作品概要

記憶の固執》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1931年から1931年で、ニューヨーク近代美術館に所蔵されている。

詳細な画像を見る

シュールレアリスムの旗手として知られる画家・ダリの代表的な作品のひとつ。

ここに描かれる、「柔らかい時計」はダリを象徴する存在のひとつとなったもので、またダリ自身もこの絵を再構成した作品を再度手がけている。1954年に描かれた《記憶の固執の崩壊》も、本作のリメイクとなっている。

チーズからのインスピレーション

溶けている時計は、台所で溶けるチーズを見てインスピレーションを得たとされ、「その晩の夕食の仕上げは、たいそうこってりとしたカマンベール・チーズだった。みんなが出かけた後、私はテーブルに向かったまま、このチーズが心に呼び起こした「スーパー・ソフト」という哲学的問題について、長い間瞑想に耽った」と述べている。

背景が描かれていた状態で、ガラが映画を見に行っていた2時間くらいの間に、その思考を基に時計などが加えられたとも自身が述べている。

「しばしばゾッとした」

ダリ自身もこの作品を描くにあたって、特別な雰囲気を感じていたようだ。彼は後に、「私は最初驚かされ、私のキャンバスに現れるイメージによってしばしばゾッとした。私はそのイメージを否応なく記録せざるを得ず、可能な限り正確に、私の潜在意識と夢遊を描き取った。」と記している。

またダリは、本作を描いた自らの状況について「狂人と私の唯一の違いは、私が怒っていないことだ」と語っている。

ダリ的なDNAの巨大な分子

ダリ自身は、「柔らかい時計は生物学的に言えばダリ的なDNAの巨大な分子である。それらは永続性ゆえにマゾ的であり、舌平目の肉のように機械的な時間という鮫に飲みこまれる運命である」と評している。

絵画の解釈や解説には様々な憶測が現在も飛び交い、その事によりこの絵画の計り知れない価値を見出す契機となった。

来歴

本作は、1931年に制作された翌年の1932年に、ニューヨークのシュルレアリスム専門のジュリアン・レヴィ・ギャラリーに展示された。

1934年からは、匿名の寄贈者から譲り受けたニューヨーク近代美術館(MoMA)が展示を行っている。現在でも、MoMAの最も人気の高い作品の一つとなっており、世界中から鑑賞者が訪れる。若干6歳で絵を描き始めたダリだが、その名が世界に広まったのは《記憶の固執》によってである。

大衆作品での引用

《記憶の固執》は広く知られており、大衆文化として頻繁に引用され、「ぐにゃぐにゃの時計」や「溶ける時計」といった、間違いではあるもののより描写的なタイトルで表されることも多い。

シュルレアリスムの代表的なアイコンとして知られる「ぐにゃぐにゃの時計」を表現した本作は、当時のダリの中心的思想であった「柔らかさ」と「硬さ」を表した作品の典型である。

特殊相対性理論との関係

ドーン・エイズは、「ぐにゃぐにゃの時計」は空間と時間の相対性理論の無意識な象徴であり、不変的宇宙秩序思想崩壊についてのシュルレアリスム瞑想と主張した。

溶けるチーズ

そしてこの解釈は、アインシュタインの特殊相対性理論への理解をダリが織り込んだことを暗示しているが、ダリ自身はこの見方について直接否定している。

彼は、「アインシュタインの一般相対性理論から想起されたのか」と直接問われた際、「形の歪んだ時計は陽光の中で溶けていく真ん丸なカマンベールチーズだ」と明言しているからだ。

カタルーニャの風景

彼の故郷であるカタルーニャは、ダリ作品に大きな影響を与えている。パニ山(パネロ山としても知られる)の山裾にある、ダリの家族が利用していた夏の別荘は、例えば《パニ山の山影とカダケスの風景》に見られるように、類似した場面が彼の作品に度々登場していた。

《記憶の固執》では、パニ山の山影が前景を緩やかに覆い、ケープ・クレウスのゴツゴツした沿岸が遠景に横たわっている。

奇妙な生物

構図の中心、ダリが当時の彼自身を表現するのに用い、その後の作品にも頻出する自画像のような抽象的な形をした奇妙な「モンスター」の中に、人間の姿が見て取れる。

その「薄れていく」生物は、夢の中の正確な形と構図を突き止めることができないものであり、まつげの生えた閉じられた片目は、その生物もまた夢を見ていることを暗示しているとも解釈できる。

この図解はダリが経験した夢に基づいたもの、また「ぐにゃぐにゃの時計」は夢の中で過ぎ行く時間の象徴とも考えられる。《記憶の固執》は、覚醒時ではなくより夢の中で見られる像を描写すべく、シュルレアリスム絵画技術の正確さを利用して描かれた作品である。

時計のモチーフ

1970年代にダリは、《ダンスの時間Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ》、《時間の気高さ》、《記憶の固執》や《時間のプロフィール》などの彫刻作品でも、「ぐにゃぐにゃの時計」を描いた。

他にも、リトグラフの中でもこれを描いており、生涯に渡ってダリにとって「ぐにゃぐにゃの時計」が大きな意味を持っていたことが分かる。

作品をもっと見る

基本情報・編集情報

  • 画家サルバドール・ダリ
  • 作品名記憶の固執
  • 英語名未記載
  • 分類絵画
  • 制作年1931年 - 1931年
  • 製作国フランス
  • 所蔵ニューヨーク近代美術館 (アメリカ)
  • 種類油性
  • 高さ24.1cm
  • 横幅33cm
  • 更新日
  • 投稿日
  • 編集者
  • 記憶の固執の感想を書き込む

    こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。

    1. 匿名

      ダリの絵が好きですが、この絵はその中でも大ファンです。昔、スペインで見たことがありますが、写真で見るより綺麗でしたよ。また彼の地を訪れたいですね。

    2. 雪絵

      ダリの作品は、実際に見るとグラデーションがかかっていて凄くきれいなんですが、どこか物悲しくなりますよね。ぐにゃっとした時計もなんだから悲しい気持ちになりますが、私だけですかね、、

    3. 最近絵画に感化された高2です

      この絵は前から変わった絵だなぁと思っていたのですが、夢に基づいて描かれたんですね。

    4. 匿名

      美しくて不思議な絵ですね。いろいろな解釈ができるから見ていてとても楽しい。

    5. 中2

      美術の鑑賞でこの作品について書くのですがどのように解釈できるのかわからないです。
      みなさんがどんな解釈をしているのか知りたいです。