作品概要
《悔悛する聖ペテロ》は、画家のエル・グレコによって制作された作品。制作年は1590年から1595年で、サンディエゴ美術館に所蔵されている。

マニエリスムを代表する画家であるエル・グレコが描いた『悔悛する聖ペテロ』は、グレコが不朽の信心を描いた聖人画の一つである。聖書の物語をテーマにした絵画を多く描いてきたグレコは、度々ペテロの聖人画に取り組んでいる。本作品と同じ構図、色彩で描かれた聖ペテロの聖人画は少なくとも6枚にのぼる。
画題
ペテロは十二使徒の一人で、キリストに対し他の使徒よりも近く密接な関係にあったことから「十二使徒の王子」といわれることもある。しかしキリストが逮捕されると、「お前はキリストの弟子ではないのか」との詰問してきた人々に向かって三度否認した。
三度目の否認の直後に鶏の鳴く声が聞こえるが、キリストはこれを予言しペテロに告げていた。このことを思い出し後悔して泣き崩れるペテロの姿を描いたのが本作である。
反宗教改革派の動き
背景の黒々とした樹の幹と対比するように、ペテロはこの世のものとは思えない光に照らされている。ペテロの悲しげな表情と姿勢を強調するこの演出は、似た構図を持つ他の同名作品の数点にも見て取れる。絵の左下には天使とマグダラのマリアの姿が見える。これは、マリアが天使からキリストの復活を告げられ、それをペテロに報告しに行こうとしている場面である。
この場面が描かれたことは、反宗教改革派の動きと無関係ではないとされている。キリストの磔後のペテロの後悔の日々は、プロテスタントが異論を唱えている悔悛や懺悔といった礼典を反改革派が正当化するために使われていたからである。
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