作品概要
《神殿から商人を追い払うキリスト(1570年)》は、画家のエル・グレコによって制作された作品。制作年は1570?年から1570?年で、ミネアポリス美術館に所蔵されている。

『神殿から商人を追い払うキリスト』はミネアポリス美術館のエル・グレコの油絵である。同名または同主題の絵画をグレコはその生涯で何度も制作しており、本作は1570年頃の作品。聖書で伝えられているキリストの行動の一場面、『神殿の清め』を描いている。
画面の中央左寄りに、明るく光を反射した衣服に身を包んだキリストが鞭を振り下ろさんとしている。キリストに向かって左側にいるのが商人たちであり、右側にいるのが十二使徒といわれる。構図や背景の建物、人物像などについては、ミケランジェロやティントレット、ラファエロなど同時代の芸術家から影響を受けているともいわれている。画面の右下に不自然に頭部をのぞかせる四人は、左から、ティツィアーノ、ミケランジェロ、ジュリオ・クローヴィオ、そしてラファエロという、ルネサンス期の巨人たちである。キリストの足元の段には、グレコの本名がギリシア語で書かれている。
本作品では、エルサレムの神殿で商売をする商人たちをキリストが追い出す場面が描かれているが、これは反宗教改革の美術において当時よく好まれていた主題であった。カトリック教徒にとってこの主題は、プロテスタントという異教徒の追放と内部改革による浄化を暗示するからである。
独自のマニエリスムの手法で描くグレコは、本作でも、合理的でない光の照射や雑然とした空間配置、そして調和を崩すような輪郭線によって、キリストの怒りや崩壊の雰囲気を描き出している。
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