作品概要
《神殿から商人を追い払うキリスト(1600年)》は、画家のエル・グレコによって制作された作品。制作年は1600?年から1600?年で、ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

本作はエル・グレコがほぼ同じ構図で描いた複数の『神殿から商人を追い払うキリスト』のうち、ロンドンのナショナル・ギャラリーが所蔵しているものである。1600年頃、トレドでの作品と言われている。マタイの福音書の21章で語られる、キリストが生前神殿にいた商人たちを追い出したという場面を描いている。
画面の中央をキリストが大きく占め、その目は見開かれ手には今にも振り下ろさんとする鞭が握られている。福音書によると、キリストは、祈る者のためにある神殿で生贄用の動物の売買や両替をしていた商人たちを追い出したという。絵の左側に群がるのが商人たちで、右側でキリストに仕えるのが使徒であると言われる。
背景の神殿の壁にはレリーフが見えるが、追い出された商人たちの背後の壁にはアダムとイヴが楽園から追放される場面が彫られている。これはキリストによる神殿の清めを暗示している。一方で使徒たちの後方、右の壁にはイサクの犠牲が描かれている。これはキリストの死、すなわち贖罪の原形を暗示している。画面の右端には籠を担いだ女性が意味深に描かれているが、この女性が示すものについての一致した見解はない。
グレコは同じ主題、似た構図で何枚か描いているが、30年ほど前に完成したとされているワシントンにある『神殿を清めるキリスト』には、アダムとイヴやイサクのレリーフは描かれていない。一方で、ニューヨークのフリックコレクションが所蔵している同名の作品は、大きさこそロンドンのものより小さいものの、構図や色彩、背景などはほとんど一致している。
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