作品概要
《羊飼いの礼拝》は、画家のエル・グレコによって制作された作品。制作年は1612年から1614年で、プラド美術館に所蔵されている。

『羊飼いの礼拝』はエル・グレコが亡くなる最後の年に描いた油彩画で、グレコの作品の中では最も色彩に富んだ絵画の一つ。この時代のグレコの作品は、息子のホルヘ・マヌエルの手を借りて描かれたものが多いが、『羊飼いの礼拝』の大部分はグレコ本人の手によって描かれたものだと思われる。
キャンバスの中ほどには生まれたばかりの赤ん坊(キリスト)が描かれ、その身体から放たれた光が周囲を照らしている。キリストの周りには赤ん坊の奇跡の誕生を祝い敬意を表するために集まった羊飼いたちが描かれている。上空には同じくキリストの誕生を祝う天使たちが舞っている。
キリスト誕生の瞬間を描くことは伝統的な画題であったが、この作品では、一見不釣り合いな配色や歪められた人物像によって、その光景をより恍惚とした奇跡的な様子で表現している。踊りを踊っているように身体をくねらせた天使や羊飼いたちは絵に躍動感をもたらし、濃淡を強調した色彩が場面をより劇的に演出している。
絵画において光をどのように表現するかということは、グレコにとって長年の課題であった。『蝋燭に火を灯すために燃えさしに息を吹きかける少年』はグレコの初期の作品であり、光の表現を試すために描かれたものであったといえる。しかし、本作品では光は作品の主題そのものではなく、絵画的表現のひとつとして見事に作品に取り入れられている。
この絵画は一度トレドの聖ドミニコ男子修道院にあるグレコの墓に飾られたが、後に同教会の主祭壇に祭られた。その後、1954年にマドリードにあるプラド美術館に収蔵された。
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