作品概要
《パラス・アテナ》は、画家のグスタフ・クリムトによって制作された作品。制作年は1898年から1898年で、ウイーン歴史博物館(ウイーン市立歴史美術館)に所蔵されている。

パラス・アテナはクリムトによる正方形の油彩である。クリムトの弟である、ジョージが作成した黄金の額縁に縁どられ、紀元前6世紀に造られた黒絵式の古代ギリシア陶器の文様を背景に、一層威厳に満ちた様子で女神アテナが佇んでいる。
アテナ神は、オリンポス12神の一柱であり、知恵と戦いをつかさどる神だが、その力を恐れた父神ゼウスに飲み込まれたのち、その体の傷口から誕生したという伝説や、叔父にあたるポセイドンとアテナイ市の派遣を巡る戦いを繰り広げた伝説において知られている。
本作品の発表の前年である1897年、クリムトは自身を中心に新しい造形表現、非保守的な表現を目指す芸術家グループ、ウイーン分離派を立ち上げている。これは、1892年に設立されたミュンヘン分離派に追随するものであり、本作品はウイーン分離派の代表作として世に示されたものであることは、この作品を解釈する上で重要なポイントである。
つまり、戦いの女神であるアテナの姿に、自身らの既存の勢力、あるいは、自身らより現在は巨大な存在に立ち向かう意思を投影した者と考えられる。美しき女神の女性らしさを強調するかのように、ヘルメットからは赤毛が零れ落ち、その胸元は目を合わせた者を石に変える怪物、ゴルゴンの首を模した首飾りで彩られている。
威厳に満ちた戦女神が槍を掲げる左腕には梟が描かれ、薄暗い背景からこちら側、あるいは保守的な考えを捨てない当世の芸術家らへの抵抗心・敵対心を露わにしているのである。
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