作品概要
《愛》は、画家のグスタフ・クリムトによって制作された作品。制作年は1895年から1895年で、ウイーン歴史博物館(ウイーン市立歴史美術館)に所蔵されている。

クリムトによる油彩、「愛」では、男女の愛を象徴するシーンが淡く、消え入りそうなタッチで表現されている。本作は、クリムトの連作、「寓話とエンブレム」シリーズの一作であるが、同シリーズは、人生における最も重要な瞬間の心象風景を比喩的に描写することにより、シンボル的に描き出すことをテーマにしたものである。
クリムトが単に愛し合う男女を描くにとどまらず、他の人物、象徴世界をも描きこんでいることに注目してほしい。中央部に配された愛し合う二人の姿は、まるで劇場のステージに立つ俳優のようにも見えるが、それを見つめるのは女性の上半身、浮遊しているようにも見える幼い子供、年老いた者、そして、死者なのである。
こうした描写が人生と、人の心、愛の移ろいを表現していると考えられる。クリムトは、この後に描いた作品の中でも、女性像を寓話的またはシンボルとして良く取り入れた。
クリムトの作品にとって、大きな転換とも言える変化が本作品において起こっている。それは、フレームの使用である。絵画全体のほぼ半分を占める淡い金の描写が、絵の両側に垂れ込めるように幅広く描かれている。
そして、主題はさらにその中央に配されているのである。両側にあるフレームには、みずみずしいバラが描かれており、愛という主題を描き出すうえでの前奏曲のような役割を果たしていると思われる。本作において、クリムトは単色使いのフレーム、そして、主題との前後関係が見て取れるような描写を行ったのである。
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