作品概要
《サッポー》は、画家のグスタフ・クリムトによって制作された作品。制作年は1888年から1890年で、ウイーン歴史博物館(ウイーン市立歴史美術館)に所蔵されている。

サッポー(または、サッフォー)は、クリムトによる油彩で、同名の古代ギリシアの詩人、を題材としている。本作品の制作時期は、彼と彼の設立した技術カンパニーが名声を獲得しつつあった20代後半、画家としての初期に当たる時代と言える。
サッポーは、エーゲ海の北東に位置するギリシャ第三の島地である、レスボス島の出身である。スケッチの段階においてすら、この作品には、フランスの象徴主義画家で、神話の世界をモチーフに作品を発表していた、ギュスターブ・モロー(1826-1898)の文学性と幻想的な世界観による影響を伺うことができる。
またこの作品からは、ラファエル前派と呼ばれる、1840年代にイギリスで設立された画家、詩人、批評家らによる美術グループから影響を受けたこともうかがうことができる。ラファエル前派とは、ミケランジェロやラファエル以前の美術に倣い、中世?当世の文学、伝説を細密に描写することに価値を置いた芸術家たちの一派である。
クリムトは、1897年に伝統主義・保守主義からの乖離を謳った、ウイーン分離派の創設に関わり、会長に任命されているが、そのことも本作品における主題・表現に影響を与えているかもしれない。
直線直角のラインにより、幻想の世界観がキャンバスを突き抜けるような手法は、1888年の「ウイーンの旧ブルグ劇場」においても見られたものである。
綿密に書き込まれた肖像、美しく描写された自然の情景は、古典復興を狙ったヒストリシズム(ヒストリズムとも言われる)を反映したものであり、優美かつ典雅な古典的表現に対する尊敬の念が伺えるものとなっている。
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