作品概要
《キオス島の虐殺》は、画家のウジェーヌ・ドラクロワによって制作された作品。制作年は1824年から1824年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

「キオス島の虐殺」はドラクロワの作品では高さ4m以上ある2番目に大きなものであり、キオス島が見舞われた戦争中の破壊の恐怖を示している。
この時期の国内の崩壊の描き方としては一風変わっていて、この絵には虐げられた犠牲者を補うような英雄的人物はなく、破滅と絶望の間にほんのわずかに希望を暗示させている。侵略者は迫力をもって描かれているのに対し、犠牲者の惨憺たる表現は、初めてこの絵が展示されて以来批評されてきた。ドラクロワはこの冷酷な占拠者への共鳴を示そうとしたのではないかと非難した批評家もいる。
この絵は、人物を2つのピラミッド型に分けて構成している。赤いトルコ帽をかぶった男を頂点に置く左側は、男の一人は負傷して瀕死の間際であり、もう一人は自力で身を防御することもできそうになく、目の前の負傷した子供の方向に視線は向いているが子供達には注がれていない。
この無関心に見える様子は落胆しきった諦めをこのグループに漂わせている。一方、右側は馬に縛られもがく女や上へと身を伸ばす女、ぞっとするほどの馬の鬣、その馬に乗って身をくねらせ命令する兵士、どれもがダイナミックで、強健に真っ直ぐ垂直に伸びるピラミッドの形で構成されている。しかし、その足元には年老いた女が空をじっと見つめていて、その右にいる赤ん坊は、固くこぶしを握った死体に母性の安らぎを探している。
1821年、まだ有名でなかったドラクロワはオスマントルコ人とギリシャ人との間の戦争の場面を描き、サロン・ド・パリで展示する事で名声を上げたいと考えていた時期の作品である。
左側のピラミッドは絶望を、右側にはわずかの希望を感じ取れた。
2019年9月9日 7:10 pm, ID 14207