作品概要
《象》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1948年から1948年で、個人蔵に所蔵されている。

『象』は1948年に制作された油彩作品。いくつかの関節でつながった細長い脚を持つこの象は「宇宙象」とも呼ばれ、『聖アントワーヌの誘惑』や『目覚めの一瞬前に柘榴の周りを蜜蜂が飛びまわったことによって引き起こされた夢』など、様々な作品の名に繰り返し登場するモチーフである。最初に登場したのは『聖アントワーヌの誘惑』(1942)であるが、本作品では絵画の主題として登場する。
この象はローマ・パンテオンの裏手にあるベルニーニの彫刻『ミネルヴァの象』に触発されたと言われている。背中にオベリスクを乗せた象の彫刻の脇には「堅固な知識(オべリスク)を支えるためには、力強い精神(象)が必要だ」との文言が刻まれている。このように力強さ、権力などの象徴として扱われてきた』象に、ダリは「欲望がほとんど見えない多関節の足」としてひょろ長い足をつけ強さと弱さを対比させた。
しかしながら、よく見ると象が支えているはずのオベリスクは背中に接していないし、節足動物のような脚で支えられる頭と胴体はほとんど重量がないのではないだろうか。
ダリはこの象の持つ浮遊感について「宇宙の無重力空間では、ずっしりとした重みの象でも浮いてしまう」とし、「地上における権力」と「宇宙における無重力」の対比を表現したかったのだと述べた。そして同時に純然と楽しみを追求しているとし、「私は審美的な配慮などせず、ごく自然で、かつ内面からあふれる感情にインスピレーションを得て、それらを正直に描き出している。」と述べている。
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