作品概要
《ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1945年から1945年で、国立ソフィア王妃芸術センターに所蔵されている。

『ウラニウムと原子による憂鬱な牧歌 』は、当時アメリカに移住していたダリが、1945年広島・長崎への原子爆弾投下に大きな衝撃を受けて描いた作品。いくつかの要素が組み合わされたオブジェが画面上に無秩序に融合されている。
右下には爆発の鮮烈な閃光と立ちのぼる煙、アメリカを象徴する野球選手たち、中央のグレーの人間頭部の形態には、細長く引き伸ばされた「柔らかい時計」が張り付き、形態の顔面部分には爆撃機が爆弾を投下している。またその人間頭部の形態からはいくつかの球体が分裂していく、もしくはその形態が球体に分解されようとしているのか。これはアメリカによる原子爆弾の使用、核分裂による巨大な破壊エネルギーの誕生などを連想させる。
作品全体を黒色が支配し、死、破壊、恐怖といった陰鬱な世界を表現する。同時にダリは「黒い世界」の外側に,明るい青空が広がるもう一つの世界の存在も描いている。絶望と対比させる希望である。青い空を背景とした部分では子どもが遊び、ダリ作品に度々登場する「宇宙象」の原型となるような生物がゆったりと歩いている。「宇宙象」は象の胴体に細長い足を付けた生き物で、地上の権力も宇宙空間では無力であることを意味している。
本作品では「偏執狂的批判的方法」に基づくシュルレアリスムの具象画の形を取りながら、次第に関心を深めていた量子や原子核など科学的な「神秘主義」への試みを見ることができる。
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