作品概要
《新人類の誕生を見つめる地政学の子供》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1943年から1943年で、ザ・ダリ・ミュージアムに所蔵されている。

シュールレアリズムとの関係を断った後、ダリは現代芸術の抽象性に反対し、ルネッサンス芸術に創作のヒントを求めた。カトリックに帰依してから、彼の作品のモチーフは個人的なものから、科学や宗教的なより普遍的なものに移行していった。
ダリは本作『新人類の誕生を見つめる地政学の子供』を描きながら、その変化の時期を表すような単語をメモしている(パラシュート、ルネッサンス、加護、半球天井、胎盤、卵、地球の歪み、生物学的な楕円など)。
本作はダリが1940年から1948年にわたり、アメリカに滞在していた時に描かれたものである。作中では、世界にそしてダリに新たに知られることになったアメリカの重要性が表現されている。卵を割る男は、新しい国つまりアメリカから現れており、このことは世界の変化を示している。アフリカと南アメリカは大きく描かれており、ますます増加していた第三世界の重要性を表現している。
一方でヨーロッパは男の手で潰されており、その国際的な力の低下が暗示されている。卵の上下に配置された布は、新しい国であるアメリカの胎盤を意味している。卵から流れる一筋の血が示すように、新しい国アメリカの誕生は大きな痛みと苦痛を通じて達成されるのだ。
前景に立ち卵を指さしている、両性具有の老人は、その世界の変化を承認しているように見える。怯えて小さくなっている子供は、タイトルにある地政学の子供であり、この新しい時代を象徴している。
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