作品概要
《足なえたち》は、画家のピーデル・ブリューゲルによって制作された作品。制作年は1568年から1568年で、ルーヴル美術館に所蔵されている。

「足なえたち」は晩年の作品であり、1568年に制作された。作品では、歴史的出来事「ゴイセン」が主題となっている。「ゴイセン」はネーデルランドの貴族同盟であり、スペイン・フィリップ2世政権やフランスの枢機卿アントワーヌ・ペルノ・ド・グランヴェルによる迫害に抗して結成された。
グランヴェルは、ネーデルラントにてプロテスタント弾圧を行ったといわれる。ブリューゲルは、5人の足なえ(二肢マヒの為に歩行の手段として松葉杖を使用する者)と1人の女性を描いている。足なえたちは乞食の姿で描かれ、街壁の外にて軽蔑・慰みの対象となっている。また、足なえたちは、社会的階級層を示す謝肉祭(カーニバル)の帽子を被っている。厚紙の王冠は王、紙のシャコー (前立てのついた筒形の軍帽)は兵士、ベレー帽は中産階級の市民、キャップは農民、ミトラ(司教冠)は司教を表している。
足なえたちの後方には、女性が描かれている。女性は空の器を持ち、足なえたちには見向きもしない様子である。当時、ヨーロッパ絵画において、足なえを題材とした作品は皆無である為、非常に珍しい描写といえる。
ブリューゲルは、作品に風刺的意味合いを含ませている。二肢マヒという身体的不自由は、倫理的老朽の象徴である。社会的階級に関係なく全ての人間が、老衰の影響を受けるということを意味している。足なえが狐の尻尾を身に着けた姿は、精神の俗化を象徴している。当時の政治や生活など現実世界を風刺している。足なえという社会的弱者の姿を通して、人間の偽善的行動に対する批判を表現していると解釈できる。現在、 「足なえたち」はルーブル美術館(フランス・パリ)にて展示されている。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。