作品概要
《謎めいた要素のある風景》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1934年から1934年で、ガラ=サルバドール・ダリ財団に所蔵されている。

タイトルにある「謎めいた要素」は画面の半分以上を占める空の下に集められている。そこに強烈な光が当てられ、後ろ姿の画家がそれを描いている。
これは17世紀のオランダ・デルフトの画家フェルメールで、フェルメールの作品『絵画芸術(画家のアトリエ)』(1666年頃)の中に描きこまれたフェルメール自身の姿と酷似している。
他の画家には辛辣な言葉で激しく攻撃することの多かったダリであるが、フェルメールに関しては一切批判していない。それどころか「アトリエで仕事をするフェルメールを見ることができるのなら、この右腕を切り落としてもいい』というダリの有名な言葉に表現されているほど心酔していた。
明瞭で調和のとれた色調やシンプルで静謐でありながら綿密に計算された空間構成など数少ないフェルメールの作品に残された特徴は、ダリにも継承されているのではないだろうか。またダリは「フェルメールには完ぺきなものをさらに完璧にしようとする熱狂と苦悩があった」とも述べており、厳密な写実主義を超えようとするフェルメールにシュルレアリスム的なものを感じていたのかもしれない。
1934年頃、ダリは他にも『テーブルとして使われるフェルメールの亡霊』など『絵画芸術(画家のアトリエ)』に着想を得た作品を描いている。
絵の右下にはセーラー姿の少年と、こちらに背を向けてしゃがんで何か作業をしている看護婦の姿が見える。セーラー姿の少年はダリ、手には骨とフープを握っている。この2つの像はシュルレアリスム期のダリの同時期の作品によく登場する。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。