作品概要
《ラファエロ風の首をした自画像》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1921年から1921年で、ガラ=サルバドール・ダリ財団に所蔵されている。

ダリの初期の作品のひとつである『ラファエロ風の首をした自画像』は、ダリが敬愛した画家の一人であるラファエロの1506年頃の自画像にインスピレーション受けて描いたといわれる。
ダリのトレードマークであるピンと張った髭はまだなく、首をねじるように正面を向き、太くがっしりした首と長いもみあげの若者。後期印象派の影響を感じさせる鮮やかな色彩で描かれたカダケスの村を背景に、額に配された緑の斑模様が得も言われぬ不安定な内面を映し出している。ちなみに制作の過程でダリはこのカダケスを見下ろすポイントに同じ時刻に何度も通い、光の当たり方などを確認したという。
ダリは生まれる数か月前に兄を亡くしている。悲嘆にくれた両親は生まれてきたダリに兄の名をつけるが、この亡き兄の存在がダリに大きな混乱と苦悩をもたらした。早熟で知的な子どもであったダリは自身の存在理由について葛藤を繰り返す。もともと情緒的に不安定で感情的である上に度々サディスティックな奇行に出たのも、強い承認欲求があったことを感じさせる記述が残っている。
兄の影は払拭されることなく幼いダリの中で大きくなり、いつか自分が兄の代わりに墓に埋められ朽ち果て行くというイメージを持つようになるが、この「朽ちていく肉体」というテーマはダリの作品にも何度も現れ発展していったのである。
画家の不安定な内面を切り取るように大胆なタッチと鮮烈な色彩で表現した作品であるが、このように初期のダリは印象派を始め様々なジャンルの絵画を描き、自らの方向性を模索していた。
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