作品概要
《アメリカの詩》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1943年から?で、ダリ劇場美術館蔵に所蔵されている。

1940年、ダリはアメリカに逃亡し、第二次世界大戦が終結するまでそこで暮らした。ダリが、アメリカのカリフォルニア州モントレーに滞在していたときに制作された、『アメリカの詩』(1943年)では、アメリカと愛する故郷スペインの風景が融合されている。
そこには、ビショット家の塔とカダケスの海の景色がアメリカの砂漠に描かれ、アメリカの象徴的な商品に賛美を贈るべく、手前にはコカコーラのボトルが据えられている。これは革新的な意思表示であり、アメリカのポップアートや、アンディ・ウォーホールが手掛けたトップブランドの宣伝に先行するものだった。コカ・コーラ瓶の底からは黒い血が流れ出しており、その黒い血はダリの「ロブスター電話」でも使われている黒電話でもある。
この絵の中にある、大きな時計台には、アフリカ大陸の形状と柔らかくなった男性器の形状をダブル・イメージして生成された皮膚のようなものが掛けられている。また扉のない、彼方が透けて見える構造の塔は「縄跳びをする少女のいる風景」と同じもので、ラファエロの「聖母の結婚」からの引用である。
ダリによれば、アメリカにおけるアフリカ系の人々が置かれている厳しい状況を表すために、涙を流すアフリカを建物に描いたのだという。描かている人物は、黒人、およびアメリカ先住民系のスポーツ選手。左から2番目の黒人はフットボールをしており、左端の人物はアメリカ原住民とヤリ投げの選手のダブル・イメージであると思われる。右の2人のスポーツ選手の足にひっかけられている白い布は白人とアメリカ国旗の背景の白い部分を象徴している。
白い布の上に黒い血が溜まり巨大なシミを生成しているが、これはアメリカの人種問題を揶揄していると思われる。決して白背景に赤と青のシミができることはないのだ。
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