作品概要
《マグロ漁》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1966年から1967年で、ポール・リカール財団に所蔵されている。

ダリが晩年に描いた傑作のうちで、本作の『マグロ漁』は最も重要な作品といえる。この作品についてダリは、宇宙の無限さという概念よりは、その有限性を描こうとしたと述べている。
彼は全ての宇宙はある一点で一つに融合すると力説しており、今回の場合、その場面がマグロ漁だったというのだ。ダリのそうした壮大な思想が、この作品に驚くべきエネルギーを与えている。描かれた全ての魚、全てのマグロと全ての人間が、有限の宇宙を擬人化したものなのだ。ダリは熱狂的な人物でいっぱいの本作を描くのに、丸二年を費やした。
本作はダリが視覚表現の方法に四十年身をささげたことの成果であり、ある意味ダリという作家の遺言でもある。というのも、本作の中で、ダリはこれまで自身のシューレアリズム作品で用いてきた全ての表現方法を使用しているからだ。また本作における、並はずれた写真のような描写力は、もちろんダリの技術の賜物であるが、それと同時に彼がプロジェクターを使用して模写したい像をキャンバスに投影するといった近代的な手法を取り入れたことも一因である。
描かれたイメージはギリシャ風の彫刻から映画まで多岐にわたる。漁では多くの血が流れており、激しい争いを感じさせる。筋肉の張りや男性の暴力的な姿勢はミケランジェロの『システィーナ礼拝堂天井画』に描かれた人物を彷彿とさせる。対照的に、背景に描かれた本物の漁師たちは、地味で余計なことはせずに黙々と彼らの仕事に励んでいる。
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