作品概要
《ヴォルテールの見えない胸像》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1940年から1940年で、ザ・ダリ・ミュージアムに所蔵されている。

ダリの作品の中には、見方によって二通りに見えるものがいくつかあるが、『ヴォルテールの見えない胸像』はその中でも最も優れた作品の一つである。
1940年の作品で、キャンバス地に油彩で描かれており47cm×66cmの寸法となっている。ダリは、同じくだまし絵を得意とした16世紀の画家のジュゼッペ・アルチンボルドの影響もあり、生涯を通じて錯視に魅了されていた。
細部に一切の変化を加えることなく、絵の構成は二つの矛盾するが完成されたイメージの間を行き来する。二通りに見える視覚のトリックをダリは気に入り、その技術に通じていたことによって、ダリは非常に高い精度で視覚の現象を描き出すことができた。絵の左側にはダリの妻のガラがベルベットのテーブルクロスにもたれかかっていて、フランスの哲学者のヴォルテールの胸像を見つめている。
しかしその胸像は彼女の眼前で、いくつかのイメージへと変化する。よく見ると、大きな白い襟のついた古めかしい服を着た二人の人間に見えるのだ。彼らは奴隷市場に立っている商人で、彼らの姿がヴォルテールの頭と肩の像を形作っている。
ダリは本作について「この作品は異常なものを普通に、普通なものを異常なものに見せるために描かれたものだ」と説明している。また作中にガラが登場することについても「彼女の忍耐強い愛情を考えると、彼女が皮肉で大衆的な奴隷の世界から私を守ってくれているのだ。ガラは私の人生において、ヴォルテールのイメージとすべての懐疑主義を破壊してくれる」と述べている。
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