作品概要
《父の肖像》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1925年から1925年で、カタルーニャ美術館に所蔵されている。

『父の肖像』は1925年にバルセロナで開催されたダリの最初の展示会に出品されたものである。この展示会はダリがパリへ行き、シュールレアリズムに傾倒する以前のものであり、『父の肖像』はシュールレアリズム以前のダリの代表的な作品の一つである。
ダリは恐ろしい性格を持つ父親の表情、特に鋭い目を強調してこの作品を描いている。はっきりと描かれた輪郭、光と影の描き方、トーンの表現力。本作で使われているこうした表現から、若いころのダリが、技術的にはかなり熟達していたことが見て取れる。
ダリの父親、ドン・サルバドール・ダリは公証人であり、フィゲラスでは地元の名士として知られていた。彼は非常に厳格で威圧的な人物で、無神論者かつ共産主義者だった。父はダリが学者の道に進むことを望んだが、ダリは芸術家の道を選んだのだった。またダリの父はダリがガラと交際していることを不快に思い、さらにはダリが第一回パリ個展に『聖心』という作品を出展したことに怒りダリを勘当してしまう。
『聖心』には「私は時々、気晴らしに、母の肖像に唾を吐きかける」というキャプションがついていた。これはダリの意図としてはイエス・キリストが聖母マリアのことを言っている内容であり、シュールレアリストの仲間に加わるための踏み絵のような行為だった。しかしダリの父は、そのキャプションがダリの母のことを言っているのだと勘違いし、ダリを追放してしまったのである。こうした背景を知っていると、本作を見る時にも作品の細部に、ダリと父親との複雑な関係性を読み取ることができるのかもしれない。
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