作品概要
《海辺に出現した顔と果物鉢の幻影》は、画家のサルバドール・ダリによって制作された作品。制作年は1938年から1938年で、ワズワース・アテネウム美術館, ハートフォードに所蔵されている。

本作からは、茶色の梨と、画題の由来であるワイングラスにも見えるような脚のついた銀色の果物鉢の描写が優位的に認識される。意図的に生み出された錯視――人の顔(この顔はダリの後年の作品「永遠のエニグマ」にも再度登場する)――が、鉢と同一の場所に見られる。果物は波打つ髪の毛であり、鉢のボウル部分は額であり、鉢の柄の部分は鼻筋、鉢の脚は顎になっている。しかし、巨大な顔の目にあたる部分は、果物鉢と形態を一にしているというよりもむしろ、岸の端の砂浜に横たわっている後景の事物によって形成されている。つまり、右目は巻貝であり、左目は船の一部なのである。
画面の中景にて砂浜は終わっていて、転がっている梨の傍には前述の果物鉢を縮小したヴァージョンが確認できる。これと同一縮尺でもうひとつ幻影的な顔が描かれており、これはもっと遠くの、裸の男性人物のちょうど右肘のあたりに現れている。これと同じところに、2匹の犬が道沿いに遊んでいるのが見える。1匹は、画面左右の余白いっぱいに広がる非常に巨大で幻影のような犬の姿の反復である。
このような形態の反復表現は、ダリのシュールレアリストとしての作品においてしばしば用いられたモチーフである。犬が付けている首輪は、風景の向こう側でアーチ型の橋か水道橋のようなものを形作っている。
本作はエラ・ギャルップ・サムナーとメアリー・カトリン・サムナーのコレクションのひとつである。
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