闇の中の航海

《闇の中の航海》は、スイス出身の芸術家パウル・クレーにより1927年に制作された油彩画である。テート・モダンに所蔵されている。

暗闇とのコントラスト

画面中心を横切る船は、リズミカルな線形構造と明るい色で描き出されており、一連の三角形が帆を形成している。画面右下および上部には、幽霊のような形の船が繰り返し描かれている。構図の中央上部は青い月で占められている。ただし、画面表面に重点を置いているということは、これらの要素がすべて錯覚の深さを示唆することなく表面で衝突することを意味する。クレーの暖色は、埋め込まれた暗闇とのコントラストによって相殺され、さらに強化されている。

旅行の際に描かれた作品

この作品は、1927年の地中海旅行の際に制作された。《南フランスの海辺のリゾート》（1927年、テート・モダン蔵）もその時に描かれた。1927年7月、クレーは南フランスの都市トゥーロン近くのポルクロールに一人旅をし、その後2週間コルシカ島に滞在した。絵画制作に取りかかったクレーはこの旅の終わりを10月上旬まで延ばし、その結果教職に就いていたバウハウスの学期の始まりに間に合わなかった。キャンバスに油彩というこの作品の形態は、バウハウスのアトリエ、またはデッサウで職についているにもかかわらずミュンヘンにあったアトリエのいずれかで、帰国後に完成させた可能性を示唆している。