作品概要
《ティルスの征服》は、画家のアントニオ・ヴァッシラッキによって制作された作品。制作年は1590年から1590年で、ドゥカーレ宮殿に所蔵されている。

作品
1123年、ヴェネチア共和国元首のドメニコ・ミキエルが命じたヴェネチア艦隊の十字軍が、ファーティマ朝統治下の街ティルスを征服した場面を描いた油絵である。
歴史
11世紀後半ティルスの街は、ファーティマ朝のパレスチナ沿岸にある重要な港の一つであった。
街は圧倒されるような壁で囲まれていながらも、1099年5月パレスチナを侵略中の十字軍に、住人たちは食料を渡していた。狂信的な兵たちとの争いを避けたかったからである。
2ヶ月でエルサレムは占領され、十字軍はピサ、ジェノバ、ヴェネチア艦隊の援軍とともに、続く10年間で次々にファーティマ朝の地中海に面する主な港を征服した。
ティルスは、1107年、1111年とエルサレム王国ボールドウィン1世が侵略を試みたが失敗。1112年、再び十字軍は包囲戦略を諦めざるを得なかった。1123年アルトゥク朝の首長は、ボールドウィン2世を捕らえ北シリアで投獄。一旦、十字軍は兵を退けた。
しかしヴェネチア共和国のドージェ(元首)ドメニコ・ミキエルが命じた120以上もの海軍の船が到着し、ティルスは陥落。その軍は15000人もの兵が参加し、恐らく騎士たちが自らの馬を引き連れ参加した初めての十字軍であった。
ティルス征服を契機に、エルサレム王国は領地を最大限に広げ、ヴェネチアは特権的な貿易権を得ることとなった。
収蔵
この作品はドゥカーレ宮殿の二番目に大きいホール『投票の間』にある。このホールを飾る絵のテーマは、ヴェネチア艦隊の東方の海における勝利であり、数多くの天井画にその素晴らしさや象徴的な姿が描かれている。
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