作品概要
《レーダーと白鳥》は、画家のジュリオ・カンパニョーラによって制作された作品。制作年は1515?年から1530?年で、大英博物館に所蔵されている。

作品
川辺で抱き合う裸の女(レーダー)と白鳥(ゼウス)と、背景に川へ飛び込む2人の姿、街と橋が描かれている。この作品は、ジュリオ・カンパニョーラによるものかどうかは意見が分かれる。
題材
『レーダーと白鳥』はギリシャ神話に由来するアートの題材である。主神ゼウスが白鳥に姿を変え、アイトーリア王テスティオスの娘でスパルタ王テュンダレオースの妻であるレーダーを誘惑する(犯すとするバージョンもある)。レーダーはゼウスの子、ヘレネー(後のスパルタ女王)とポルックス(カストールと双子)と同時に、テュンダレオースの子、カストールとクリュタイムネーストラー(後のミュケーナイ王アガメムノーンの妃)を産んだ。
この題材は16世紀に、男女間の性行よりも女と白鳥との性行の方が受け入れ易いという奇妙にも思える流行によるところが大きい。初期の作品群では、同時期の著名な芸術家が描いた男女間についての作品より、露骨に描かれている。
ルネッサンス時代には、未だこういった題材は危険とされ、私家版が多かった。当時の性本I Modiが数年後に辿った結末で、それが理解できる(教皇クレメンス7世により、製作者マルカントニオ・ライモンディは投獄され、初版本は全て破棄された)。
ジュリオ・カンパニョーラが描いたとされるこの作品では、性行のシーンを描いているものの、レーダーは曖昧な態度を見せている。
技法
カンパニョーラは、銅版画に濃淡のグラデーションをつけるため、スティップル法(点刻彫版法)を編み出した。それまでは基本的に線描が使われてきたが、多数の細かい点や線を用いることで、グラデーションの移り変わりを滑らかに表現できるようになり、銅版画制作における重要な発明となった。
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