作品概要
《キリストとサマリアの女》は、画家のジュリオ・カンパニョーラによって制作された作品。制作年は1510?年から?年で、ワシントン・ナショナルギャラリーに所蔵されている。

作品
ヨハネによる福音書にある話を主題としており、水を飲むために井戸に来たソマリアの女にキリストが彼が救世主であることを打ち明ける直前の場面である。背景には潟が描かれている。
時代背景
アルカディア、理想的田園。自然と調和し、素朴さの中に生きる羊飼いたちが生きる詩的な地。
それが初めてベネチア絵画において表現されたのは、16世紀初めの20年間のことだ。この時期、ベネチアの政治状況は緊張に満ちていたにも関わらず、その正反対の田園的情景は、人文主義の文化や書籍出版業界に平和な世界観をもたらした。
技法
カンパニョーラは、グラデーションをつけるため、スティップル法(点刻彫版法)を編み出した。彫刻では基本的に線描が使われるが、多数の細かい点や線を用いることで、滑らかなグラデーションをつけられるようになり、これにより以降の版画作成に非常に大きな発明となった。
作者
カンパニョーラは、ベネチアの画家、特にジョルジョーネが描いた風景に近いものを版画で表していたが、その作品は単に風景を思い起こさせるだけではない。様々な分野を学んだカンパニョーラは、細密画などの美術だけでなく、音楽(彼自身、リュート奏者で歌手であった)や、その時代の人文学的な考え方(文学、詩、ラテン語、ギリシャ語、ヘブライ語)にも精通していた。
生まれた地パドヴァや育った地ヴェニスで、ヒューマニストの集まりによく顔を出しており、積極的に人文学に関わり、アルカディア(理想的田園)というテーマは、他の芸術家たちが作り出したモチーフの真似や知識人たちに好まれるような見せかけであったと言うよりも、新しい何かを創作するベースとなるアイデアであった。
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