作品概要
《装飾文字S:聖ペテロへの天国の鍵の授与》は、画家のロレンツォ・モナコによって制作された作品。制作年は1395年から1398年で、ワシントン・ナショナル・ギャラリーに所蔵されている。

ロレンツォ・モナコによる写本(Cod.Cor.8)に向けた 6つの装飾文字の内、状態を維持しているものは3つしかない。今作品は現在見つかっていない3つのイニシャルの内の1つを含んでいる。イニシャルSの中に《聖ペテロへの天国の鍵の授与》を描いたもので、フォリオ134の一片である。
オレンジと緑と淡い黄色の発葉で装飾されてた青色のイニシャル「S」の中に、オレンジのチュニックと黄色のマントを羽織った聖ペテロが立っているキリストの前で跪いているが、その顔は四分の一程度しか見ることができない。暗い青のクロークを赤いローブの上に羽織ったキリストは、右手を聖ペテロの頭に祈るように載せ、左手は聖人への2つの金色の鍵を持っている。二人はイニシャルの横木によりお互い分けられており、下部の半分は彼らが立っている(一方は膝をついている)オレンジと緑の模様のカーペットが大部分を占めている。両者の後光は文字が刻まれたような模様が施されており、イニシャルの大部分の領域は装飾模様がプレスされている。
「十二使徒の王子」として知られ、ローマ・カトリック教会の歴史上の教皇権の象徴であり源とされている聖ペテロは、通常、キリストから鍵をもらいうけた、ということで特徴づけられる。「そして私はそなたに言ったのだ。ああペテロ、この岩の上に私の教会を建て、地獄への扉はここから開くことはないであろう。そして私はそなたに天界への鍵を授ける。これは、そなたを地球上で拘束する何をも同様に天界で拘束するものとなり、そなたが地球上で失うものは同様に天界でも失うものとなるであろう。」(Mt 16:18-19)
キリストが鍵を授けるこのシーンは、ここでは聖ペテロと聖パウロの祝日に向けた朝課(礼拝)の最初のノクターンの、始めのレスポンソリウム(応唱)のために描かれている。「シモン・ペテロ、そなたをボートから呼びだす前から私はあなたを知っており、そなたを民の王子として任命し、そなたに天界の扉の鍵を授ける。」
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