作品概要
《哀歌》は、画家のロレンツォ・モナコによって制作された作品。制作年は1408年で、プラハ国立美術館に所蔵されている。

ロレンツォ・モナコはフィレンツェにあるサンタ・マリア・デッリ・アンジェリ教会内の修道院の修道士として人生の大半を過ごした。彼が心の奥深くに感じ、持っている信仰はこの《哀歌》のシーンの描き方に存分に表現されている。
荒涼とした寂しい場所に、大きな十字架、キリストの死により悲しみにくれた聖母マリア、そして親しい側近達が大きく描かれている。深い悲しみが全体の風景を支配していて、それはまるで時間が止まったようで、嘆き悲しむ人々以外の何も生きている魂は存在しないようにもみえる。全体の暗いムードは、背景の暗い色の岩と塔による縦線によってもさらに強化されている。
《哀歌》のシーンはもともと3つの作品からなる祭壇画であり、キリストがオリーブ山で“Three Marys(3人のメアリー)”と共に墓所にいるシーンを描いたその1作品はパリのルーヴル美術館のコレクションの一部として所蔵されている。
非常に横に長く構成されている点と、作品の後方に木製の留め具がついていた点から、今作品が1つの長い物語を描いたプレデッラの一部を構成していたことがうかがえる。今作品を含むプレデッラの他の作品は現時点で見つけられてはいないが、作品内で描かれてる人物はキリスト以外全員座っているか膝をついているが、その人物の大きさはパネル画の縦幅いっぱいに描かれている。これは「受難」を主題にした物語の続きを描いた作品が他にある可能性が極めて低いことが推定される。今作品のように当然のように大きさが分離されている前例は14から15世紀の「受難」を描いた作品ではなかったことである。それにも関わらず、「死せるキリスト」を描くには「キリストの受難(磔)」のシーンを前提としているので、その主題は祭壇画のどこか、作品のメインとなる中央のパネル画、もしくは作品の高所に位置するパネル画で描かれることが通常である。
保存状態がとても良かった今作品は、もともとの表面の光沢を保っており、彼の聖歌集への細密画とパネル画で使用している色の幅の比較がより直接的に行うことができる。特にフィレンツェのロレンツォ・メディチ図書館に所蔵されているCod.Cor.Ⅰ(cat.no.29)にあるイニシャルの細密画と比べるとその違いは顕著である。今作品はその色使いの大胆さと繊細で静かな情動強度が融合した傑作であり、全体の構図を通常不適切な形状をした画角の中に巧みに適応することに成功している。
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