作品概要
《聖パウロの斬首刑》は、画家のロレンツォ・モナコによって制作された作品。制作年は1938年から1940年で、プリンストン大学美術館に所蔵されている。

もともと複数パネルからなる祭壇画(聖ヒエロニムス、洗礼者ヨハネ、ペトロ、聖パウロを描いた大作を含む)のプレデッラの一部であったこの作品は、聖パウロの斬首刑と聖プラウティッラのヴェールの奇跡を描いている。このヴェールは、この高貴な女性からパウロに、実刑中にその目を覆い隠すために貸されたものである。そしてそれは、天国にいった聖人から、彼女の忠誠を思い出すように、天使を通じて返される様子が描かれている。
この主題は新約聖書には存在しないが、四世紀のPassio Sancti Pauli Apostoli (聖パウロの受難)には記述があり、13世紀のレゲンダ・アウレアによる黄金伝説にも記述がある。上部の左側の角に、哀れみをさそうような表情をした聖パウロが、ローマ人の未亡人であるプラウティッラからヴェールを受け取るために空に現れ、彼の実刑中に目隠しのために彼女はそれを差し出す。この作品はベルリン、バルチモア、レスターとプライベートコレクションにあるパネル画と同じプレデッラから来た作品である。フィレンツェのアカデミア美術館にある聖パウロの立ち姿を描いた作品の下方部、右手側に位置していた可能性もあった。1936年に、ニューヨークの銀行化である、フィレゾレ(ヴィラ・サン・ミケーレ)に邸宅を持つヘンリー・ホワイト・キャノンより美術館に譲渡された。
フェデリコ・ゼリはかつて、今作品を含む複数のプラデッラを関連付けさせ、もともとのひとつの祭壇画として再建することを提案した。その計画はミクロス・ボスコヴィッツからのサポートも受けていた。再建計画ではもともとの作品の構成を確実に表現することが目的だった。現存しているパネル画は過去プレデッラの左端、ヒエロニムスの全身画を描いた《聖ヒエロニムス》(フィレンツェ、アカデミア美術館所蔵)の下に位置していた。その後《荒野の洗礼者ヨハネ》(レスター、レスターシャー博物館)と共に、聖ヨハネの全身像を描いた《洗礼者ヨハネ》(フィレンツェ、アカデミア美術館)の下に展示された。中央のプレデッラで描かれるシーンは《キリストの降誕》(ベルリン、ベルリン美術館)で、《玉座の聖母子》(オハイオ、トレド美術館)のパネル画の下部に位置していた。4つ目のプレデッラは《聖ペトロの殉教》(ボルチモア、ウォルターズ美術館)であり、聖ペトロの全身像を描いた《聖ペトロ》(フィレンツェ、アカデミア美術館)の下部に位置していた。そして最後の5つ目の作品となるのが今作品、《聖パウロの斬首刑》であり、聖パウロの全身を描いた《聖パウロ》(フィレンツェ、アカデミア美術館)の下部に位置する。4つの聖人の全身像を描いた作品は現在はすべてアカデミア美術館に所蔵されていて、1810年にフィレンツェのサンタ・マリア・デル・カルミネ教会にで見つけられたことから、この多翼祭壇画はこの教会にもともとあったと推定されている。
こちらで、ぜひ本作品の感想やエピソードを教えてください。作品に関する質問もお気軽にどうぞ。