作品概要
《磔刑》は、画家のピエトロ・ロレンツェッティによって制作された作品。制作年は?。

《磔刑》は、シエナ派の宗教画家ピエトロ・ロレンツェッティ(1280?-1384)によって制作された聖画である。現在は、メトロポリタン美術館に所蔵されている。
絵画の主題
主題である《磔刑》はキリストの受難の物語の一場面であり、多くの画家によって描かれている場面である。
ピエトロは、《磔刑》を、それまでにない哀感と劇的な強烈さで印象付け、観る者の感情に訴えている。キリストの横腹は槍で突き抜かれ、生々しく、血飛沫が飛び散っている。キリストと、キリストによって改心した盗賊の背後には光輪が見られる。聖マリアは卒倒しかけており、他の聖人らが抱きかかえている。その情景全体を兵団が監視しながら取り囲んでいる。
ピエトロのイタリア絵画への貢献
ピエトロの手法には、《磔刑》にみられる哀感と劇的な印象を与えるような作風を含め、次の時代に繋がる斬新さが多数見られる。当時には稀有であった立体的空間を用いることによって奥行きを出し、遠近法で描いたことが顕著な特徴である。また、特に聖人の体の部分にひねりや曲げや傾きを出すことによって、人間性を加えたことも特徴的である。衣装にはドレープを描くことによって、それを纏う人物の荘厳さを表すといったジョットの手法もふんだんに取り入れた。
《磔刑》の背景には、当時のイタリア絵画の伝統的な作風である金箔が施され、それにより、聖性や荘厳さが強調されているが、一世紀後、ファン・エイク(1390?-1441)によって、その伝統的なイタリア絵画の背景描写に変化がもたらされた。エイクは、ピエトロの多様な手法を受け継ぎながら、背景に金箔ではなく、より身近な実際的な風景画を描いた。これがイタリア絵画の、すばらしい自然主義へと繋がった。
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